乾癬とは
銀白色の鱗屑(ふけ)をともない浸潤をふれる(少し盛り上がって固い感じ)境界明瞭な紅斑(赤み)が全身に出ます。大きさ、数、形、分布は様々で、発疹が癒合して大きな病変を作ることもあります。症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら経過します。
青壮年期に発症することが多く、多発しますが、通常、内臓を侵すことはありません。かゆみは約50%の患者さんにみられます。爪の変形や関節炎を伴うこともあります。まれに発疹が全身におよぶこともあります。
1000人に1人が発症し、患者さんは全国に約10万人いると推定されています。昔は日本人には極めてまれと考えられていましたが、徐々に増加傾向にあり、現在では決してまれとはいえなくなりました。欧米では1000人に20~50人と多く、一般の人にも乾癬という病気が広く知られています。
乾癬は症状の違いにより5つの種類に分けられます。
- 尋常性乾癬
- 膿疱性乾癬
- 関節症性乾癬(乾癬性関節炎)
- 乾癬性紅皮症
- 急性滴状乾癬
原因
まだわかっていませんが、細菌やウイルスによる病気ではないので、他人に感染する心配はありません。
最近の研究で、乾癬患者さんの病変部では表皮の異常だけでなく免疫系にも以上が生じ、炎症が起きていることが分かってきています。
免疫とは、私たちの身体を細菌やウイルスなどの異物から守るための防御システムです。しかし、何らかの要因(遺伝的な要因、外部から加わった要因)でこのシステムが正しく機能しなくなると、反対に身体を攻撃する方向に働き、病気や炎症を引き起こす原因となってしまいます。
欧米では頻度が高いことのほか、家族内発症が20~40%と高率であることが知られており遺伝的素因が推測されています。ただし日本では家族内発症頻度は4~5%と欧米に比べずっと低率です。
治療
残念がら,現時点で根本治療はありません。ですので症状やライフスタイルに合った適切な治療法を見つけ、症状の改善と生活の質の向上を目指します。
対症療法(抑えこむ治療)としては、外用療法、紫外線療法(光線療法)、内服療法、抗TNFα療法(点滴・皮下注射)の4つの治療法があります。
外用治療
確実な治療効果を得るためには、使用量や外用回数を守ることが大切です。
ステロイド外用
内服に比べて全身に及ぼす副作用が少ない点からよく用いられます。ビタミンDの外用薬に比べ、効果発現までの期間は短いですが、長期間連用することにより副作用(皮膚が薄くなる、毛細血管が拡張してくる等)が生じやすいお薬です。当院でこの治療が受けられます。
ビタミンD外用
ステロイド外用薬と同程度の効果がありますが、ステロイド外用薬よりも効果があらわれるのが遅く、2~3ヵ月かかります。
ぬった部分にヒリヒリとした刺激感を感じることがありますが、長期間にわたって使い続けても副作用が増えることはなく、ステロイド外用薬に次いで多くの患者さんに使われています。当院でこの治療が受けられます。
免疫抑制剤外用(プロトピック)
本来はアトピー性皮膚炎の治療剤であり保険適応外ですが、効果がみられることがあり、ステロイド外用の副作用が出やすい顔面の乾癬に用いられることが多いです。光線療法(紫外線治療)との併用は出来ません。当院でこの治療が受けられます。
光線療法(紫外線治療)
PUVA(プーバ)
PUVAは光化学療法ともよばれる紫外線治療法の一つです。オクソラレンという光感受性薬剤を前もって塗布または内服したのち、紫外線照射装置で長波長紫外線(UVA)を発するランプの照射を受けます。
ナローバンドUVB
中波長紫外線(UVB)のうち治療に有効な波長(311nm)のみを選択的に発するランプを用いて照射を行います。PUVAのように前もって光感受性薬剤の塗布や内服は必要ありませんので簡便です。
当院でこの治療が受けられます。
エキシマライト、MEL
紫外線治療の中で最新の治療です。小範囲に強度の強い308nmの中波長紫外線(UVB)を照射します。従来の紫外線治療で効果がなかった場合でも効果が出ることがあります。
当院でこの治療が受けられます。
内服療法
患部が広い場合や、皮膚症状が強く外用療法で十分な効果が得られなかった場合に行う治療法です。
シクロスポリン(ネオーラル®)
もとは臓器移植の手術をした後に起きる拒絶反応をおさえる薬としてつくられましたが、免疫の異常をおさえる作用をもつことから、乾癬の治療にも使われるようになりました。
高い効果がありますが、血圧の上昇や腎臓の障害などの副作用が起きることがあるので、服用中は定期的な検査を行います。
当院でこの治療が受けられます。
アプレミラスト(オテズラ®)
2017年に発売された新規薬剤です。PDE4という酵素を阻害することにより炎症を抑え、乾癬の症状を緩和します。飲み始めの頃には、吐き気や下痢、頭痛などが生じることがあります。
当院でこの治療が受けられます。
レチノイド(ビタミンA誘導体、チガソン®)
皮膚の新陳代謝を調節する働きがあります。
高い効果がありますが、皮膚や粘膜の副作用を起こすことがあります。
また、男女とも服用中に子供ができると奇形が生じる危険があるので注意が必要です(服用前に同意書を記入します)。
当院でこの治療が受けられます。
生物学的製剤(点滴・皮下注射)
バイオテクノロジーの技術で創られた新しいタイプの薬です。
皮膚症状を速やかに改善するほか、治療が難しい爪の変形にも効果があります。免疫の異常が原因とされる病気に効果があり、乾癬のほか、関節リウマチやベーチェット病、クローン病などの難病にも高い治療成績をあげています。この治療は各都道府県の指定病院で受けられます。
日常のケア
乾癬は症状がおさまっている時期と悪くなる時期をくり返す病気です。症状の悪化を防ぐためには、薬や光線療法などの治療とともに、日常のケアがとても大切です。
皮膚への刺激
傷や摩擦など皮膚への刺激は、乾癬を悪化させる最も大きな要因の1つです。
鱗屑を無理にはがしたり、お風呂で患部を強くこするのは控えましょう。
また、皮膚症状が出ていない部分でも、引っかいたり、傷をつけたりすると、そこに新しく乾癬ができてしまうことがあります。これを「ケブネル現象」といいます。
ケブネル現象は、衣服やメガネ、洗髪するときのこすりすぎなどによっても起きることがあります。
やわらかくて肌にやさしい天然素材の下着や、ゆったりしたデザインの衣服を選ぶとよいでしょう。
感染症
細菌やウイルスが体の中に入って風邪や扁桃炎などの感染症にかかると、乾癬が悪化することがあります。また、熱が長引くと乾癬が全身に広がって治りにくくなってしまうことがあります。
日頃から手洗いやうがいを忘れないように習慣づけましょう。
風邪やインフルエンザの流行期はマスクで予防を心がけましょう。
食事・お酒・たばこ
日本は海外に比べて乾癬患者さんが少ないですが、最近では増加する傾向があり、その原因として食生活の欧米化が指摘されています。また、肥満になると乾癬が治りにくくなるといわれているので、脂肪の多い食品のとりすぎに注意して、バランスのよい食生活を心がけましょう。
また、お酒や辛い食べものは体を温めるので、かゆみが強くなることがあります。かゆみがあるときは控えめにしましょう。
禁煙は健康の基本ですが、喫煙は乾癬にもマイナスなので控えましょう。
ストレス
精神的なストレスは乾癬の症状を悪化させる大きな原因となります。とはいえ、ストレスをゼロにするのは、たやすいことではありません。自分に合った解消法を見つけて、上手にストレスを発散しましょう。
入浴
入浴やシャワーは、皮膚を清潔に保つために大切ですが、洗いすぎには注意しましょう。
また、石けんはよく洗い流し、入浴後はやわらかいタオルで体をふきましょう。
日光浴
紫外線は乾癬の症状改善にプラスの作用があります。また、日光浴は体や心のリラックスにもつながります。
ただし、強い日ざしは反対に乾癬を悪化させてしまうので、季節や時間、服装に気をつけましょう。